9+3 はどうやって計算する?
これはほとんどの人が、次のように計算するでしょう。
9+3 = (9+1)+2 = 10+2 = 12
では、3+9 は?
くり上がりのあるたし算では、「3+9」のように前の数(被加数)よりも後ろの数(加数)が大きいとき、後ろの数を前の数に足すか、前の数を後ろの数に足すかが、問題になります。
これについてどう指導したらよいか、これが今回の記事のテーマです。
くり上がりのある足し算 2つの足し方とそれぞれのメリット
それでは、3+9 を二つの方法で計算してみましょう。
どちらが計算しやすいか、比べてみてください。
【方法1】 加数分解:後ろの数を分解して前の数に足す。
= 10+2 👈 3に7を足して10
= 12 👈 10に2を足して12
【方法2】 被加数分解:前の数を分解して後ろ数に足す
= 2+10 👈 1を9に足して10
= 12 👈 2を10に足して12
この二つの方法には、それぞれ利点があります。
加数分解(方法1)のメリット
・自然な流れで計算できる
一般に、たし算の式「A+B」は、「A(被加数)にB(加数)を加える」という見方をします。
方法1は、この流れに逆らうことなく計算することができます。
また、最後に答えを導き出すときも、「10に2を足して12(=10と2で12)」というように、計算での数の並びがそのまま答えになります。
方法2では、「2を10に足して12(=2と10で12)」というように、数の並びを入れ替えなくてはなりません。
被加数分解(方法2)のメリット
・足される数は、大きい数のほうが10の補数を把握しやすい。
3にいくつ足すと10になるかを考える(方法1)よりも、9にいくつ足すと10になるかを考える(方法2)ほうが容易です。
一般に、10に近い数ほど瞬時に補数を把握できます。
・足す数は、小さい数のほうが分解しやすい。
9を7と2に分解する(方法1)よりも、3を1と2に分解する(方法2)ほうが容易です。
一般に、小さい数ほど瞬時に分解できます。
くり上がりのあるたし算の足し方 どう指導すればよい?
最初に述べたように、「9 + 3」のように前の数が後ろの数より大きい場合は、後ろの数を前の数に足すことと、小さい数を大きい数に足すことが両立するので、方法1で計算するのが普通です。
方法2で計算する理由がありません。
しかし、「3 + 9」のように後ろの数のほうが大きい場合は、この二つが両立しないので、どちらかの方法を選択して計算することになります。
このようなひと桁の数の組み合わせは、次の16通りあります。
2+9
3+8
3+9
4+7
4+8
4+9
5+7
5+8
5+9
6+7
6+8
6+9
7+8
7+9
8+9
全てを方法1で計算するという人もいますが、一般的な傾向として、前の数が4以下になると(左の3列)、方法1では計算しずらくなります。
そのため、「6+7」は方法1(加数分解)で計算するけれども、「2+9」は方法2(被加数分解)で計算するという人が多くいます。
このとき、どの組み合わせを方法1(加数分解)で、または方法2(被加数分解)で計算するかは任意です。
ちなみに、僕の場合はこうなります。
- 2+9 → 方法2
- 3+8,9 → 方法2
- 4+7,8,9 → 方法2
- 5+6,7,8,9 → 方法1
- 6+7,8,9 → 方法2
- 7+8 → 方法1
- 7+9 → 方法2
- 8+9 → 方法2
小学校での指導はというと、文科省の指導要領には「児童に加数分解、被加数分解によって10のまとまりをつくるという基本を理解させたうえで、数の大きさに従い柔軟に対応できるように指導する」といった内容のことが書かれています。
方針はすばらしいのですが、教育現場の実情としては、「さくらんぼ計算」などによる「加数分解」の練習に大半の時間が割かれているようです(学校や先生にもよるので一概には言えないのですが …)。
たくさんの生徒を相手に最低限の学力を保証しなければならないので、そうなってしまうのはしかたのないことかもしれません。
計算において「数の大きさや組み合わせに応じて柔軟に対応できるようにする」ことは、数学に必須とされるナンバーセンスを養うことにほかなりません。
その意味で、いろいろな数の組み合わせを加数分解、被加数分解の両方で計算し、比較することは、初期の算数の学習の中でもかなり重要な部分です。
したがって、足りない部分は家庭の学習でしっかり補ってあげる必要があります。
やり方としては、ドリルやプリントなどの「被加数<加数」となる組み合わせの各問題を、加数分解、被加数分解の二つの方法で解いてもらい、比較させます。
ときには「なぜこっちのほうがやりやすいの?」などと聞いてみるとよいでしょう。
正解を求める必要はありません(そもそも正解などありません)。
そのプロセス自体がナンバーセンスを養います。
これを数十問繰り返していくと、最終的には自分のやりやすい方法を自然に選択して計算できるようになります。



子どもの学びに関する多くの学術的知見を持っています。
また、6歳児から中高校生まで勉強を教えた経験があり、学力に与える学習の効果は、年齢が低いほど大きいことを痛感しています。
これらを生かして、効果的で再現性の高い子どもの学びのあり方や方法を提案していきます。よろしくお願いします。