この記事は、「たし算・ひき算の式は前から計算すべき?」の続編です。
前回の記事を簡単におさらいしておくと、
- 「3つの数のたし算・ひき算」は、「+」「-」の記号と数字を一緒に扱うことで、足し引きの順番を入れ替えたり、特定の部分から計算したりすることができる。
- それによって、計算が容易になる場合がある。
- そうやって計算を工夫することで、数学の能力として必要不可欠なナンバーセンスを養うことができる。
ということでした。
今回は、小学校2年生で学習する「3つの数の計算(二桁の数)」を利用して子どもの数学力をアップさせる方法について解説します。
ナンバーセンスを育てる「3つの数の計算」のやり方
3つの数のたし算・ひき算の手順は3とおり
3つの数のたし算・ひき算には3とおりの計算手順があります。
たとえば、「13+7+3」は、
- (13+7)+3 7を足してから3 を足す
- (13+3)+7 3 を足してから7を足す
- 13+(7+3) 7と3を合わせて足す
「13-7-3」は、
- (13-7)-3 7を引いてから3を引く
- (13-3)-7 3を引いてから7を引く
- 13-(7+3) 7と3を合わせて引く
「13+7-3」は、
- (13+7)-3 7を足してから3を引く
- (13-3)+7 3を引いてから7を引く
- 13+(7-3) 7と3の差を足す*
* 引く数より足す数のほうが大きいので、足す数と引く数の差を足します。
「13-7+3」は、
- (13-7)+3 7を引いてから3を足す
- (13+3)-7 3を足してから7を引く
- 13-(7-3) 7と3の差を引く*
* 足す数より引くす数のほうが大きいので、引く数と足す数の差を引きます。
3とおりの手順の中から最も合理的な方法(簡単な方法)を見つければよいので、低学年の子どもが取り組むナンバーセンスのトレーニングにはもってこいです。
計算をラクにする2つのポイント
「3つ数の計算」をより簡単に計算するポイントは、答えを導くまでの思考プロセスを最小化することです。
具体的には、
➀ 最初の計算で10のまとまりがつくれるかどうか
➁ くり上がり・くり下がりを回避できるかどうか
です。
では、実際の例を見てみましょう。
㋐「前から計算した場合」と、㋑「足し引きの順番を工夫した場合」の思考プロセスの回数の違いに注目してください。
↓ 以下の計算式は、思考プロセスの全工程を表しています。計算のしかたは複数あるので、以下はその一例です。
たし算だけの式 ~「10になるペア」を見つける
(1) 6+7+4
㋐ 前から計算する
6+7+4=6+4+3+4 👈 7を4と3に分解(繰り上がりが発生)
=10+3+4
=13+4
=17
㋑ 先に後ろの4を足す
6+7+4=10+7 👈 6と4で10になることに着目
=17
(2) 8+6+4
㋐ 前から計算する
8+6+4=8+2+4+4 👈 6を2と4に分解(繰り上がりが発生)
=10+4+4
=14+4
=18
㋑ 足す数をまとめる
8+6+4=8+10 👈 足す数の6と4で10になることに着目
=18
このように、3つの数の足し算は、10のまとまりになる計算の組み合わせがあるときは、その組み合わせから計算すると、全体の計算が容易になります。
ひき算だけの式 ~「10になるペア」を見つける
(1) 12-7-2
㋐ 前から計算する
12-7-2=12-2-5-2 👈 7を2と5に分解(繰り下がりが発生)*
=10-5-2
=5-2
=3
* 12を10と2に分解するやり方(10-7+2-2)もあります。
㋑ 先に後ろの2を引く
12-7-2=10-7 👈 12から2を引くと10になることに着目
=3
(2) 15-7-3
㋐ 前から計算する
15-7-3=15-5-2-3 👈 7を5と2に分解(繰り下がりが発生)*
=10-2-3
=8-3
=5
* 15を10と5に分解するやり方(10-7+5-3)もあります。
㋑ 引く数をまとめる
15-7-3=15-10 👈 引く数の7と3を合わせると10になることに着目
=5
このように、3つの数の引き算は、10のまとまりになる計算の組み合わせがあるときは、その組み合わせから計算すると、全体の計算が容易になります。
たし算とひき算のまざった式 ~「10になるペア」を見つける
(1) 14-8+18
㋐ 前から計算する
14-8+18=14-4-4+18 👈 7を5と2に分解(繰り下がりが発生)*
=10-4+18
=6+18
=6+4+14 👈 18を4と14に分解(繰り上がりが発生)*
=10+14
=24
* 計算のしかたは一例です(ほかにもいくつかの方法があります)。
㋑ 引く数と足す数を合わせる
14-8+18=14+10 👈 足す数と引く数の差が10であることに着目
=24
このように、たし算とひき算の両方を含む式も、10のまとまりになる計算の組み合わせがあるときは、その組み合わせから計算すると、全体の計算が容易になります。
また、10のまとまりになる組み合わせがなくても、手順しだいで計算が容易になる場合があります。
(2) 23-8+6
㋐ 前から計算する
23-8+6=23-3-5+6 👈 8を3と5に分解(繰り下がりが発生)*
=20-5+6
=15+6
=15+5+1 👈 6を5と1に分解(繰上がりが発生)*
=20+1
=21
* 計算のしかたは一例です(ほかにもいくつかの方法があります)。
㋑ 足す数と引く数を合わせる
23-8+6=23-2 👈 3(23の3)>2(引く数と足す数の差)に着目
=21
このように、たし算とひき算の両方を含む式は、10のまとまりになる計算の組み合わせがなくても、くり上がり・くり下がりを回避できれば、驚くほど計算が容易になります。
まとめ
「3つの数のたし算・ひき算」の問題は、次のように考えて計算すると、ナンバーセンスを育てるのにとても効果的です。
- たし算だけの式は、10になるペアがあったら、それを先に計算する。
- ひき算だけの式は、10になるペアがあったら、それを先に計算する。
- たし算とひき算のまざった式は、10になるペアがあったら、それを先に計算する。なかったら繰り上がり・繰り下がりのない手順がないかを考えてみる。
- 以上に該当する手順が見つからなかったら、自分のやりやすい手順で計算する。
このメソッドは、計算を簡単にする2つの要素が3つの手順の中にあるかどうかを見ていけばよいので、小学校の2年生ぐらいから取り組むことができます。
この年代の算数の能力が、学力全体や将来のキャリアに大きな影響力を持っていることを考えると、この学習機会は「またとないチャンス」と言えるかもしれません。
※ 「問題+解説」を用意しようと思っていますが、まだ準備できていません。ドリルや市販の問題集の問題を利用してやってみてください。
子どもの学びに関する多くの学術的知見を持っています。
また、6歳児から中高校生まで勉強を教えた経験があり、学力に与える学習の効果は、年齢が低いほど大きいことを痛感しています。
これらを生かして、効果的で再現性の高い子どもの学びのあり方や方法を提案していきます。よろしくお願いします。