数の力を身につける18ステップ!
家庭でできるチェック&トレーニング【ステップ12】
習得目標年齢:5歳
▶ 前のステップへ:【ステップ11】合わせていくつ?(10までの数)
ステップ5「残りはいくつ?(5までの数)」からの発展課題です。
扱う数の範囲を10まで拡大するとともに、計算方略の進展をはかっていきます。
このステップも前ステップと同様に、少し時間がかかるかもしれません。
じっくり取り組んでください。
【課題】具体物を見ないで残りの個数を求める
用意するもの:
おはじき(10個)、容器(カップやお椀)
手続き
- おはじきを7個カップに入れる。
→「今、カップの中に7個あるよ」と言って、子どもに個数を確認させる。 - 「3個取り出すよ」と言って、カップからおはじきを3個取り出し、子どもの前に置く。
→ このとき、カップの中のおはじきは、子供に見せないようにする。 - 子どもに「カップの中のおはじきは何個?」と尋ねる。
→ 子どもがセットした個数を覚えていない場合は、「最初、カップに7個入れたよ」などと言って、セットした個数を再度伝える。
このような手続きで、ものの集合(6~10個)からいくつかを取り除いたときの残りの個数を問います。
なお、[出題例]①~⑫の個数の求め方は、次の「チェックポイント」の後半で個別に解説しています。
チェックポイント
この課題では、入れた個数と取り出した個数の差が求められることはもちろん、ステップ5からの計算方略の進展を見ていきます。
幼児が用いる方略はさまざまですが、この段階では、次の「ⓐ 数え足す方略」か「ⓑ 5のまとまりを意識した方略」、また状況に応じて「ⓒ 補数を求める方略」で個数が求められるとよいです。
では、それぞれのやり方を見ていきましょう。
ⓐ 数え引く方略
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➀ 左右の手で7を作る(5本と2本)。
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➁ その状態から、「ろく、ご、よん」と、(2本の指のほうから)指を折りながら数え引く。
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また、数え足しのバリエーションとして、次のような方略があります。
引いた数を指でカウントする方略
たとえば、7から3を引く場合、(指を立てずに)7を覚えておいて、そこから「ろく、ご、よん」と唱えながら、指を折って引いた数をカウントしていきます。
この場合、指は引いた数を確認するために使います。
このやり方だと、「いくつ引いたか」分からなくなってしまうことがないので、より大きな数を引くことができます。
数の順番から差を求める方略
引く数が少ないとき(1か2のとき) は、数の順番から瞬時に答えを導すことができます。
たとえば、6から1を引く場合、「6より1つ小さい数は5」という具合に差を求めます。
ⓑ 5のまとまりを意識した方略
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➀ 左右の手で7を作る(5本と2本)。
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➁ 「まず、(3つのうちの)2つを取って」などと言って、2本の指を折り畳む。
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➂ 「(取るのは)あと1つだから」などと言って、5本の指の1本を折り畳み4本にする。
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* 指の使い方からは、ⓐの数え引きと区別できない場合があります。
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➀ 左右の手で7を作る(5本と2本)。
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➁ (3を取る操作として)2本から3本は取れないので、5本のほうの指を3本折り畳む。➜ 左右の指(2本と2本)を見て、「よん」。
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引く数が5よりも大きいときは、引く数を「5といくつ」に分けて引くと、容易に差(残りの個数)を求めることができます。
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➀ 左右の手で9をつくる(5本と4本)。
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➁ 7を引く操作として、まず、5本の指の手を閉じる(引く数の7を5と2に分け、先に5を引く)。
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③ 「(取るのは)あと2つだから」などと言って、4本の指の2本を折り畳み2本にする。
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※ ②と③の操作は順番を入れ替えてもよいです。
ⓒ 補数を求める方略
セットした個数の大部分を取り出したときは、「補数」で考えると容易に残りの個数を求めることができます。
たとえば、9個から7個を取り出したときの残りの個数は、「7個に2個を足すともとの9個になるから、2個」という具合に求めます。
この「2」のことを「9に対する7の補数」といいます。
これを数え引きで求めようとすれば、「はち、なな、ろく、ご、よん、さん、に」と、7回数え引かなければなりませんが、補数で考えれば、「はち、きゅう」と2回数え足すだけで済みます。
あるいは、数え足さなくても数の順番から「7に2を足すと9になる」ことが瞬時に判断できます。
このほうが、早くて確実です。
①(6,-1)
- 6をセットし(5本と1本)、 端数の1本を折り畳んで「5」。
- 数の順番から(6より1小さい数は)「5」。
②(8,-2)
- 8をセットし(5本と3本)、3本のほうを2本折り畳んで「6」。(方略ⓐまたはⓑ)
- 数の順番から(8より2小さい数は)「6」。
③(9,-3)
- 9をセットし(5本と4本)、4本のほうを3本折り畳んで「6」。(方略ⓐまたはⓑ)
④(9,-4)
- 9をセットし(5本と4本)、4本のほうの手を閉じて「5」。(方略ⓑ)
一方の手が4本であることに注目させる。
⑤(10,-5)
- 10をセットし(5本と5本)、片方の手を閉じて「5」。(方略ⓑ)
これも5本と5本の形になっているので、どちらかの5本を閉じるだけでよい。
⑥(8,-5)
- 8をセットし(5本と3本)、5本のほうの手を閉じて「3」。(方略ⓑ)
一方の手が5本であることに注目させる。3本のほうから引かないのがポイント。
⑦(7,-3)
方略ⓐⓑの解説を参照。
⑧(6,-3)
やり方は⑦と同じです。
- 6をセットして(5本と1本)、3を数え引く。(方略ⓐ)
- 6をセットする(5本と1本)。→ 1本のほうの手を閉じて「5」。→ 5本の2本を折り畳んで「3」。(方略ⓑ その1)
- 6をセットする(5本と1本)。→ 5本のほうの指を3本折り畳んで「(2と1で)3」。(方略ⓑ その2)
⑨(8,-4)
やり方は⑦と同じです。
- 8をセットして(5本と3本)、4を数え引く(方略ⓐ)
- 8をセットする(5本と3本)。→ 3本のほうの手を閉じて「5」。→ 5本の1本を折り畳んで「4」。(方略ⓑ その1)
- 8をセットする(5本と3本)。→ 5本のほうの指を4本折り畳んで「(1と3で)4」(方略ⓑ その2)
⑩(9,-7)
方略ⓑⓒの解説を参照。
数え引きを使う子どもには、ⓑとⓒの方略を使うように促します。
促し方については、次の「練習のポイントのステップ②・③」で解説しています。
⑪(7,-6)
やり方は⑩と同じです。
- 7をセットする(5本と2本)。 → 5本のほうの手を閉じて「2」。→ 2本の1本を折り畳んで「1」(方略ⓑ)
- (補数で考えて)「6に1を足すと7になるから1」(方略ⓒ)
⑫(10,-7)
やり方は⑩と同じです。
- 10をセットする(5本と5本)→ 5本のほうの手を閉じて「5」。→ 5本の2本を折り畳んで「3」(方略ⓑ)
- (補数で考えて)「7に3を足すと10になるから3」(方略ⓒ)
練習のポイント
ステップ① カウント・オールから数え引きへ
子どもがまだカウント・オールに頼っているようなら、教示者が指の使い方をアドバイスしたり、実演したりして、まずはⓐの数え引く方略に導いていきます。
出題例①~⑫の一巡目は、全て数え引きでやってみるのも一つの手です。
ステップ② 5のまとまりに意識を向けさせる
数え足しをマスターしたあとは、5のまとまりに意識を向けるように促していきます。
数え引きから5のまとまりを意識した方略に向う流れとしては、
たとえば7から3を数え引くとき、「なな、ろく、ご、(一拍置いて)よん」という具合に5を強調して(手でも強調)、子どもの意識が5に向かうようにしていきます。
そして次の段階で、5のまとまりを意識した方略を取り入れていきます。
ステップ③ 補数にも目を向けさせる
出題例⑩~⑫のようなケースで(引く数と引かれる数の差が小さいとき)、まだ補数で考えることができない子どもには、次のようなやりとりによって、補数で考えると簡単に計算できることに気づかせるようにします。
- 教示者:(おはじきを9個を子どもと一緒に数えて、カップの中に入れる)
- 教示者:「今、カップの中に何個ある?」
- 子ども:「9個」
- 教示者:「7個取り出すよ」(と言ってから、7個取り出して子どもの前に置く)
- 教示者:「カップの中のおはじきは、何個になった?」
- 子ども:(計算中)
- 教示者:(少し待ったあと)「9から7を引くのは大変だね。この7個にいくつ足すともとの9個になるかな?」
- 子ども:「2個」
- 教示者:(カップの中を見せて、2個残っていることを確認させる)
なお、状況に応じて方略を使い分けられるようになることは、「ナンバーセンス」の観点からも非常に重要です。
▶ 次のステップへ:【ステップ13】こっちの手には何個ある?(10までの数)(近日公開予定)
子どもの学びに関する多くの学術的知見を持っています。
また、6歳児から中高校生まで勉強を教えた経験があり、学力に与える学習の効果は、年齢が低いほど大きいことを痛感しています。
これらを生かして、効果的で再現性の高い子どもの学びのあり方や方法を提案していきます。よろしくお願いします。