3歳までの褒め方【基礎編】

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今回の記事のテーマは、

「学習意欲、挑戦意欲の高い子ども」、「困難なことにも粘り強く取り組む子ども」の育て方

です。

【基礎編】ということで、「乳児期から幼児前期にかけての親の望ましいフィードバックとサポートのあり方」について、エビデンスに基づいて解説していきます。

なお、幼児前期(3歳まで)で区切っているのは、子どもは4歳にもなると、プロセス・プレイズとパーソン・プレイズを区別するだけでなく、その称賛が本音かどうかまで推し量るようになるからです。これには、言葉の理解力の向上や心の理論(人の心を推し測る能力)の成熟が関係しています。

親のフィードバックのスタイルは、子どもの心理的発達にどう影響するか

最初に、親のフィードバックのスタイルについて見ていきましょう。

フィードバックのスタイルとしては、「よく褒めるか否か」と「どのタイプの称賛をよく用いるか」に注目しました。

高い頻度の称賛は子どもの粘り強さを強化する

最初にとりあげるのは、2歳の子どもが難しいパズルに挑戦するところを観察し、母親のフィードバックやサポートのあり方が子どものモチベーションにどう影響するかを分析した研究です。01

このレポートによると、パズルに取り組んでいるとき、良い結果や行動に対して親から絶えず肯定の言葉が受け取っていた子どもは、1年後、他の子どもよりも 学習意欲が高く、困難な課題に対して粘り強さを発揮しました。

肯定の言葉とは、「やった、やった」、「よく頑張った」、「その調子だ」、「できた、できた」、「すばらしい」、「賢いなあ」、「いいぞ」などです。

小さい子どもの場合、ちょっと頑張ったり、何かができたりしたときに、タイミングよくこういった言葉を投げかけてあげると、挑戦意欲や粘り強さが向上するようです。

称賛のタイプについては、子どもはプロセス・プレイズとパーソン・プレイズを区別しませんでした。

したがって、パーソン・プレイズのネガティブな影響については、確認されていません。
「0~1歳では、特に影響がない」とする別の研究結果02と合わせると、少なくとも2歳ごろまでは、パーソン・プレイズのネガティブな影響は考えなくていいようです。

たくさん褒められた子どもは、社会的能力の発達がうまくいく

もう一つ、褒めることの社会的能力への影響についても触れておきましょう。

親の褒めることに対する意識の高さと、乳幼児の社会的能力の発達の関係を調べた研究があります。03, 04

ここでいう社会的能力とは、自律性、応答性、共感、感情制御、運動制御をいいます。

このレポートによると、乳児のときから褒めることを重視していた親の子どもは(称賛のタイプの区別なし)、1歳半から2歳半で社会的能力の未発達リスクが低い傾向にありました。
さらに1歳半での母親の称賛が、3歳半までの社会的能力の発達にポジティブに関与していました。


以上、二つの研究を紹介しましたが、乳児期から幼児前期の子どもは、称賛のタイプを問わず、たくさん褒めてあげることが重要なようです。

一方で、その称賛がプロセス・プレイズであるならば、子どものモチベーションによりポジティブな影響を与える可能性もあります。

3歳以下でも、プロセス・プレイズは有効に作用する

最近の研究は、1歳半ぐらいの子どもでも、ほかでもなくプロセス・プレイズを適切なタイミングで贈ると、粘り強さが強化されることを報告しています。05, 06

また、以前に行われた縦断的な研究では、1~3歳の時に受けたプロセス・プレイズの相対的な量が、7,8歳での増大フレームワークの発達を予測しています。07)
この場合、親の一貫した称賛のスタイルが、4歳以降に作用した可能性もありますが、早期からプロセス・プレイズを使用しなければ、その利益を放棄することになっていたかもしれません。

それならば積極的に使っていくべきではないでしょうか。

なお、大量のプロセス・プレイズをいいかげんにばらまくと、かえって粘り強さを減退させてしまうので、その点は注意が必要です。06

まとめ

乳児から幼児前期の子どもは、より多くの称賛を必要としています。

小さなことでも、子どもの良い行動や結果に絶えず目を向け、タイミングよく褒めるようにしましょう。

その際、パーソン・プレイズが子どものモチベーションに悪影響を及ぼす可能性は低いです。

とはいえ、その代わりにプロセス・プレイズを用いれば、子どもの粘り強さや学習意欲の向上がよりいっそう期待できます。

結論:親は子どもが1歳のときから、プロセス・プレイズを意識すべきです。

親のサポートのスタイルは、子どもの心理的発達にどう影響するか

子どもに少し難しいことに挑戦させると、スムーズに運ばないことがしばしばです。

手間どる、行き詰る、間違える、怖くて踏み出せない、こうなるのが当たり前です。

大人でも同じかもしれませんが、自律性が芽生えるこの時期にあっては、その対応の仕方を誤ると、その後の心理的発達にネガティブな影響を与えてしまう可能性があります。

そんなときはどのように対応をすればよいのでしょうか?

先に紹介した研究01から、望ましい対応のあり方を見ていきましょう。

子どもが間違えたり、うまくできなかったりしたときは、否定ではなく訂正を

最初に取り上げるのは、子どもが間違えたり、うまくできなかったりしたときの親のフィードバックのスタイルです。

たとえば、子どもがパズルをうまくはめられないでいるとき、

ある親は、「そうじゃないでしょ!」、「どうしてできない?」のように、感情的な口調で子どもの行動を否定します。

別の親は、「そのピース、違うよ」、「上と下を反対にしてみたら?」のように、普段の口調で子どもの行動を訂正します。

1年後、親から感情的な否定のフィードバックを受けてい子どもは、課題に挑戦するときに恥ずかしさを見せる傾向がありました。また、この「恥」は、子どもの粘り強さを低下させました。

一方、感情的でない訂正のフィードバックを受けていた子どもは、全体的に、困難な課題に粘り強く取り組むことができました。

子どもの取り組みのサポートは、穏やかに見守るかたちで

子どもがタスクの遂行に手間取ったり、行き詰ったりしたときの親のサポートのスタイルについても見ておきましょう。

たとえば、子どもがパズルの組み立てに行き詰ったとき、

ある親は、「そのピースはどこに行くのかな?」などと言って、子どもが正解を見つけ出すのを穏やかに促します。

別の親は、子どもの手からパズルを取り、「ここでしょ!」などと言って、正解を提示します。

1年後、穏やかで自律を促すサポートを受けていた子どもたちは、困難な課題に直面して回避する可能性が低いことが確認されました。

まとめ

子どもの間違いに対しては、否定するのではなく、穏やかに訂正を促すようにしましょう。
結果や行動をあからさまに否定すると、子どもの学習意欲や粘り強さが低下する可能性があります。

また、子どもをサポートするときは、イライラせず、必要最小限の助言やヒントを与えて、自力で正解にたどり着くのを見守りましょう。そのほうが、子どもが困難から逃げる可能性が低くなります。しかも、試行錯誤して自ら正解にたどり着いたときには、極めて効果的なプロセス・プレイズを贈ることができます。侵入的な指導は、その貴重な成長の機会を奪ってしまいます。

参考文献
  1. Kelley, S. A., Brownell, C. A., & Campbell, S. B. (2000). Mastery motivation and self-evaluative affect in toddlers: Longitudinal relations with maternal behavior. Child Development, 71(4), 1061–1071.
  2. Zentall, S. R. (2009). Early parent–child relationship and type of parental praise and criticism as predictors of toddler motivation on an unsolvable task. Unpublished doctoral dissertation, University of Notre Dame.
  3. Shinohara, R., Sugisawa, Y., Tong, L., Tanaka, E., Watanabe, T., Onda, Y., Kawashima, Y., Hirano, M., Tomisaki, E., Mochizuki, Y., Morita, K., Gan-Yadam, Amarsanaa., Yato, Y., Yamakawa, N., Anme, T., & Japan Children’s Study Group (2010). The trajectory of children’s social competence from 18 months to 30 months of age and their mother’s attitude towards the praise. Journal of Epidemiology, 20, S441-S446.
  4. Shinohara, R., Sugisawa, Y., Tong, L., Tanaka, E., Watanabe, T., Onda, Y., Kawashima, Y., Hirano, M., Tomisaki, E., Mochizuki, Y., Morita, K., Gan-Yadam, Amarsanaa., Yato, Y., Yamakawa, N., Anme, T. (2012). Influence of maternal praise on developmental trajectories of early childhood social competence. Creative Education,3,533–539.
  5. Lucca, K., Horton, R., & Sommerville, J. A. (2019). Keep trying!: Parental language predicts infants’ persistence. Cognition, 193, 104025.
  6. Radovanovic, M., Soldovieri, A., & Sommerville, J. A. (2023). It takes two: Process praise linking trying and success is associated with greater infant persistence.
  7. Gunderson, E. A., Gripshover, S. J., Romero, C., Dweck, C. S., Goldin‐Meadow, S., & Levine, S. C. (2013). Parent praise to 1‐ to 3‐year‐olds predicts children’s motivational frameworks 5 years later. Child Development, 84(5), 1526–1541.
すみりょう

子どもの学びに関する多くの学術的知見を持っています。
また、6歳児から中高校生まで勉強を教えた経験があり、学力に与える学習の効果は、年齢が低いほど大きいことを痛感しています。
これらを生かして、効果的で再現性の高い子どもの学びのあり方や方法を提案していきます。よろしくお願いします。

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