幼児の数の学びに最適!百玉そろばんの選びかたと活用のしかた

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100玉そろばんをうまく活用すると、子どもの初期の数的発達を効果的に促すことができます。
この記事では、100玉そろばんを幼児の数の学びに使うメリット、その選び方や活用のしかたなどについて解説していきます。

「百玉そろばん」ってどんな玩具?

百玉そろばんは、10個×10列の玉を左右にスライドさせて、数えたり、計算をしたりする知育玩具です。

玩具といっても、子どもが一人で楽しめるようなものではありません。
むしろ、教具や学習をサポートする用具としての側面が強いです。

百玉そろばんの最大のメリットは、全ての玉が一つの枠に収められているので、非常に扱いやすく、算数が苦手な親でも、比較的容易に子どもに算数の手ほどきができることです。
この点は、他の同様の機能を持つ教具や教材よりも優れています。

反面、玉がライン上でしか動かせないので、計算の柔軟性に欠けます。
この点は、工夫が必要になります。

アプリなどを使った学びもよいのですが、有形の用具を使った学びは、親子の質の高い会話ややりとりを誘発するため、より高い知育効果が期待できます。(たとえば、01, 02

ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。

百玉そろばんで何ができる? 何歳から使える?

百玉そろばんは、次のような数の概念の理解やスキルの習得に利用できます。
特に、数的発達初期のカウンティングや合成・分解の練習には、もってこいです。

・カウンティング
・基数(何個あるか)の理解
・序数(何番目か)の理解
・5や10の合成・分解
・一桁の足し算
・一桁の引き算
・繰り上がりのある足し算
・繰り下がりのある引き算

百玉そろばんをうまく活用すれば、3歳から6歳ぐらいまでの間、子どもの数的発達を効果的にサポートすることができます(7歳以降も活用できます)。

百玉そろばん vs. 整数タイル

似たような機能の算数用具に「整数タイル」というのがあります。

ときどき、百玉そろばんとどちらがよいか、という話になるので少し触れておきます。

整数タイルの優れている点は、

  • 数を体系的に理解しやすい
  • いろいろな数の組み合わせに柔軟に対応できる
  • 念頭操作がしやすい(具体物操作から抽象数操作へのスムーズな移行をサポートする)

というところです。

どちらがよいかというよりも、二つは補完し合うかたちで使用できます。

整数タイルは、本格的な算数を学ぶタイミング(就学の少し前から就学直後)で取り入れると効果的です。

ただし、百玉そろばんほど手軽ではないので、教えるのが面倒という方には向いてないです。

百玉そろばんの選び方

百玉そろばんを選ぶポイントは大きく2つあります。

5個づつ色分けされていることは必須の条件

一列の玉が、5個づつ色分けされていることは、重要なポイントです。

5のまとまりへの意識を高め、5をよりどころとした高度な計算方略を習得をサポートするからです。

幼児が視覚的に把握できる個数は、3個か4個までです。(*131)

そのため、たとえば「4個に3個を加えるといくつになるか」は、通常、次の(1)か(2)のように数えて求めます。

(1)数え上げる方略
🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴 4個に3個を合わせる
🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴 「いち、に、さん、よん、ご、ろく、なな」

(2)数え足す方略
🔴🔴🔴🔴  4個をセットして
🔴🔴🔴🔴🔴 「ご」
🔴🔴🔴🔴🔴🔴 「ろく」
🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴 「なな」

これが、5個で色分けされたそろばんを使うと、次のような方略に容易に導くことができます。

(3)5のまとまりを意識した方略
🔴🔴🔴🔴  4個をセットして
🔴🔴🔴🔴🔴 まず、1個を加えて5個にする
🔴🔴🔴🔴🔴🔵🔵 残り2個を加えて、「(視覚的に)5個と2個で7個」

初期の数の操作では、このように、5のまとまりを意識することが重要です。
5は10進法で10の半分の数です。これを一つの単位として見ると、いろいろな数の組み合わせにシンプルかつ柔軟に対応できます。計算も早く正確になります。

実際に、幼児期にこういった高度な数え方や計算スキルを習得することは、算数が得意になるかどうかを予測します。(たとえば、03, 04, 05

5玉づつ色分けされているものは、その基礎をつくるのに役立ちます。

あと、列ごとに色の組み合わせを変えているものより、2色で統一されているもののほうが個数を認識しやすいと思います。

目盛りは必須ではないがあると便利

目盛りとは、個数をカウントするために記された数字のことです。

百玉そろばんの目盛りにはいくつかの種類があります。

  • 上のフレームに「1、2、3、…、10」の目盛り:列ごとのカウントした個数を表す
  • 左のフレームに「1、2、3、…、10」の目盛り:その列が何列目かを表す
  • 右のフレームに「10、20、30、…、100」の目盛り:その列までの合計の個数を表す
  • 「1、2、3、…、100」の目盛り板(後ろにはめ込むタイプなど):カウントした個数を表す

あくまでも補助的な機能ですが、いずれのタイプでも、あると初期の計数や計算の助けになります。

機能的に考慮すべきポイントは、この二つぐらいでしょうか。
あとは、耐久性、使いやすさなどを考慮して、選べばよいと思います。

おすすめの百玉そろばん

以上を考慮すると、結局は定番の二つになってしまいます。

玉そろばん120

  • 100玉ではなく120玉
  • 5玉づつ2色
  • 数表(後ろにはめ込むタイプの1から120の目盛りシート)が付いている ─ 数詞と数字のマッチング、数字の大きさの理解に役立つ
  • 仕切り版が付いている(縦に仕切って一列の個数を調節できる) ─ 9以下の数でも合成・分解の練習がしやすい
  • 横に倒して使える

数表、仕切り版が付いているので、数の理解が初期段階の子ども(3,4歳ぐらい)におすすめです。

トモエそろばん アバカス100

  • 5玉づつ2色
  • 50玉で色が反転 ─ 5のまとまりだけでなく、50のまとまりを意識することができる
  • 目盛りはない
  • 横に倒して使える

目盛りを必要としない段階の子どもにおすすめです(コスパよし、色の配列よし)。

百玉そろばんの活用のしかた ~ 練習のメニューとやり方

百玉そろばんの活用のしかたを紹介しておます。

その前に、幼児はそんなに長い時間集中できません。
1回の時間は10分か、せいぜい15分くらいでしょう。
それでも週に2,3回練習を積み重ねていければ、相当な学習効果が得られるはずです。
おやつの前に「これをやったらおやつにしよう」などと言って取り組むと、案外集中が持続します。

カウンティング

カウンティングは、たし算、ひき算、かけ算、わり算のすべてに関係します。
スムーズにできるようになるまで繰り返し練習しましょう。

なお、カウンティングの練習に入るには、数唱を習得し(できれば20ぐらい)、基数を理解している(少なくとも5ぐらい)必要があります(同時に習得していくこともできますが、最低限の知識は必要です)。

カウント・アップ

1個づつ(3~4歳) 参考動画① 0:17あたり

① 玉を全て右に寄せる(以下、共通)

② 玉を1個づつ左にスライドさせながら「いち、に、さん、よん、ご、ろく、なな、はち、きゅう、じゅう」と数える。

このとき、唱えている数は、左に動かした玉の合計の個数を表していることを理解させる。
最初は、「まず(左に)1個持ってくる。 もう1個持ってくると2個になる。もう1個持ってくると3個になる。4個、5個、6個、…」という具合にやるとよい。

まずは、10個がスムーズに数えられるようにする。そのあとは、数える個数を20個、30個、50個とのばしていく。

参考動画①

2個づつ(4~5歳) 参考動画① 1:22あたり

玉を2個づつ左にスライドさせながら「に、よん、ろく、はち、じゅう」と数える。

10個まで数えられたら、数える個数を20個までのばす。

5個づつ(4~5歳) 参考動画② 0:10あたり

玉を5個づつ左にスライドさせながら「ご、じゅう、じゅうご、…」と50まで数える。

10個づつ(4~5歳) 参考動画② 0:40あたり

玉を10個づつ左にスライドさせながら「じゅう、にじゅう、さんじゅう、…」と100まで数える。

3個づつ(5歳)

玉を3個づつ左にスライドさせながら「さん、ろく、きゅう、じゅうに、じゅうご、…」と30まで数える。

このとき、「9→12」、「18→21」は列をまたぐため、「9→10→12」、「18→20→21」となる(繰り上がりのあるたし算と同じ形になる)。

カウント・ダウン

1個づつ(4~5歳)

① 玉を全て左に寄せる(以下、共通)

② 玉を1個づつ右にスライドさせながら「じゅう、きゅう、はち、なな、ろく、ご、よん、さん、に、いち、ゼロ(れい)」と数える。

このとき、唱えている数は、玉を右に動かしたあとの残りの個数であることを理解させる。
最初は、「1個取って9個、もう1個とって8個、もう1個とって7個、6個、5個、4個、…」という具合にやるとよい。

2個づつ(5歳)

10個から2個づつ右にスライドさせて「じゅう、はち、ろく、よん、に、れい(ゼロ)」と数える。

10個ができたら20個でも数えられるようにする。

5個づつ(5歳)

50個から5個づつ右にスライドさせて0まで数える。

10個づつ(5歳)

100個から10個づつ右にスライドさせて0まで数える。

3個づつ(5~6歳)

30個から3個づつ右にスライドさせて0まで数える。

このとき、「21→18」、「12→9」は列をまたぐため、「21→20→18」、「12→10→9」となる(繰り下がりのある引き算と同じ形になる)。

数の合成・分解

「数の合成」とは、「2と8で10になる(10の合成)」という見方をすることをいいます。

「数の分解」とは、「10は2と8に分けられる(10の分解)」という見方をすることをいいます。

合成・分解の知識は、たし算やひき算(特に、繰り上がりや繰り下がりがあるもの)がうまく行えるかどうかにかかわってきます。

10の合成と分解(4~5歳) 参考動画② 1:00あたり(合成の後に分解が続く)
  • やり方は以下の動画を参考にしてください。
  • カウント・アップによる計数をある程度習得したら始められます。
  • 余裕があれば、5から9の数でもやってみましょう(『くもんの玉そろばん120』なら仕切り版を使用するとよい)。

参考動画②

たし算・ひき算

たし算、ひき算については、こちらの記事をお読みください。

まとめ

●百玉そろばんのメリット

  • 数を学ぶ用具としては、非常に扱いやすい。
  • 算数が苦手な親でも比較的容易に子どもに算数の手ほどきができる。
  • 数の概念の理解や計算の基礎をつくるのに効果的。特に、カウンティングや合成・分解、初期の計算の練習に最適。

●百玉そろばんを選ぶポイント

  • 5玉づつ色分けされているものを選ぶ(2色のものがより数を認識しやすいと思う)
  • 目盛りがあるとよい
  • その他
参考文献
  1. Verdine, B. N., Golinkoff, R. M., Hirsh-Pasek, K., & Newcombe, N. S. (2014). Finding the Missing Piece: Blocks, Puzzles, and Shapes Fuel School Readiness. Trends in Neuroscience and Education 3(1), 7–13.
  2. Verdine, B. N., Zimmermann, L., Foster, L., Marzouk, M. A., Golinkoff, R. M., Hirsh-Pasek, K., & Newcombe, N. (2019). Effects of geometric toy design on parent–child interactions and spatial language. Early Childhood Research Quarterly, 46, 126–141.
  3. Jordan, N. C., Kaplan, D., Ramineni, C., & Locuniak, M. N. (2009). Early math matters: kindergarten number competence and later mathematics outcomes. Developmental Psychology. 45(3):850–867.
  4. Geary, D. C., Hoard, M. K., Nugent, L., & Bailey, D. H. (2013). Adolescents’ Functional Numeracy Is Predicted by Their School Entry Number System Knowledge.
  5. Nguyen, T., Watts, T. W., Duncan, G. J., Clements, D. H., Julie S. Sarama, J. S., Wolfe, C., & Spitler, M. E. (2016). Which Preschool Mathematics Competencies Are Most Predictive of Fifth Grade Achievement? Early Childhood Research Quarterly 36, 550-560.
すみりょう

子どもの学びに関する多くの学術的知見を持っています。
また、6歳児から中高校生まで勉強を教えた経験があり、学力に与える学習の効果は、年齢が低いほど大きいことを痛感しています。
これらを生かして、効果的で再現性の高い子どもの学びのあり方や方法を提案していきます。よろしくお願いします。

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