子どもの褒め方:増大フレームワークの発達に欠かせないプロセス・プレイズとは

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子どもをどのように褒めるかは重要です。学習意欲や挑戦意欲、さらには努力の源泉となる知能観の形成に強く影響するからです。

この記事では、「努力する子どもを育てる」ための褒め方の基本をひと通り解説します。

プロセス・プレイズとパーソン・プレイズ

まずは、称賛が子どものモチベーションや知能観に与える影響について、簡潔にまとめておきます。

子どものモチベーションを高めるプロセス・プレイズとは

「プロセス・プレイズ」は、読んで字のごとく、一連の行為(プロセス)を評価する称賛(プレイズ)です。「よく頑張ったね」、「よく考えたね」、「よくチャレンジしたね」などの褒め言葉がこれにあたります。

プロセス・プレイズのポジティブな効果

「よく頑張ったね」と褒められた子どもは、「良いパフォーマンスができたのは、頑張ったからだ」と解釈します。
それは、次の難しい課題に挑戦する動機づけとなり、困難に直面しての粘り強さを引き出します。
それによってパフォーマンスも向上します。

プロセス・プレイズをよく受け取る子どもは、このようなサイクルにのって、挑戦と試行錯誤、達成を繰り返しながら成長していきます。
その結果、「成功は努力しだいである」、「失敗や困難な状況は学習の機会である」、「何をするにも方略がある」と信じるようになります。

このように、プロセス・プレイズには増大フレームワークを発達させる効果が期待できます。

(上記についての参考文献:01, 02, 03など)

子どものモチベーションを低下させるパーソン・プレイズとは

「パーソン・プレイズ」は、個人の特性(パーソン)を評価する称賛です。「~の才能がある」、「上手だね」、「頭がいいね」などがこれにあたります。

パーソン・プレイズのネガティブな効果

「才能がある」と褒められた子どもは、「うまくできたのは、才能のおかげだ」と解釈します。
この解釈は、「うまくできないのは、才能がないからだ」という解釈につながります。
そのため、うまくできないときに、あきらめや無力感を示すことが多くなります。

また、「上手だね」と褒められた子どもは、うまくできることに価値を置くようになります。
それによって、「次もうまくやらなければならない」というプレッシャーにさらされることになります。

その結果、パーソン・プレイズをよく受け取る子どもは、うまくできない可能性のあるタスクを避けるようになります。「自分に才能がないことを証明したくない」、「周りから能力が低いと思われたくない」という心理が働くからです。

このことは、重要な学習の機会を逃してしまうことを意味します。

また、そのような心理によって、悪い結果を隠したり、偽ったりするようになる可能性も指摘されています。
たとえば、パーソン・プレイズを受けた子どもが、テストのスコアを他の子どもにどう伝えるかを調べた実験では、実に4割近くの生徒が、スコアを偽って(実際よりも高く)伝えました。一方、プロセス・プレイズを受けた生徒のそれは、1割ちょっとでした。

このように、パーソン・プレイズには、自分の能力が周りからどう見られるかに意識を向けさせる効果があります。

(上記についての参考文献:01, 04, 05, 06, 07など)

その他の称賛について

称賛の中には、プロセス・プレイズにもパーソン・プレイズにも属さないものがあります。

一応、これらの称賛についても、簡単に説明しておきます。

あいまいな称賛

あいまいな称賛とは、プロセスを褒めているのか、特性を褒めているのかはっきりしない称賛をいいます。「すごい」、「よかったね」、「やったね」などがこれにあたります。

単に「すごい」と言った場合は、パフォーマンスの出来が「すごい」のか、頑張って結果を出したことが「すごい」のか、しばしば受け手の解釈に委ねられます。

親指を立てるポーズ(グッドの意)やガッツポーズなどのジェスチャーによる称賛も、あいまいな称賛の一種です。

これらの称賛は、子どもが成功した状況では、プロセス・プレイズ同様に、子どものやる気と粘り強さを高めることが確認されています。08

一方、子どもが失敗した状況で、「すごいよ」、「よかったよ」などと言っても、かえってモチベーションを低下させてしまうことがわかっています。09

結果に焦点を当てた称賛

結果に焦点を当てた称賛とは、「100点とったの⁉ やるなあ」のような称賛をいいます。

これ自体は独立した表現ですが、このあとに「そこまで頑張ったのがすごい」のようなフォローが続けばプロセス・プレイズになるし、「頭がいいのは、誰の遺伝だろう?」のようなフォローが続けばパーソン・プレイズになります。

プロセス・プレイズとパーソン・プレイズの褒め言葉を詳しく解説

では、プロセス・プレイズとパーソン・プレイズには、どんな称賛があるのか、もう少し詳しく見ていきましょう。

プロセス・プレイズの褒め言葉

プロセス・プレイズは、主に「努力」、「戦略・方略」、「挑戦」に関わる行為態度姿勢にスポットを当てます。

「よく頑張った」――「努力」に向けられた称賛

子どもが頑張る姿を捉えて、それを褒めたたえます。その具体的な称賛の言葉をいくつか挙げておきます。

継続
「毎日コツコツとよく続くなあ」
「(良い結果に対して)やっぱり積み重ねが大事だね」
「できるまでよく練習したね」
「ここまでよく頑張った」

全力・徹底
「よく頑張ったね」
「力を出し切ったね。よくやった」
「(成果を見て)一生懸命やったのがよくわかる」
「できるまで、何度も何度もトライしたんだね。その頑張りがすごい」
「細かいところまでよく描いたね」

試行錯誤
「できるまでいろんな方法を試したんだね。いいやり方だ!」

忍耐持続・集中
「よく我慢(辛抱)したね」
「本当に粘り強い(根気がある)なあ」
「ずっと集中してやり続けたのは素晴らしい!」
「簡単にあきらめないところがいいね」

完遂
「(長い距離を)よく歩いたね」
「最後までやり切ったね。やるじゃん!」

自主性
「自分から進んでやっているんだね。感心するなあ!」

「よく考えた」――「戦略・方略」に向けられた称賛

子どもの思考活動を捉えて、それを褒めたたえます。その具体的な称賛の言葉をいくつか挙げておきます。

より良い方法・手順、創意工夫
「よく考えたね」
「そのやり方、いいね。どうやってその方法を考えたの?」
「うまいことやったね」
「新しいアイディアを試したんだね。どんどんやるといいよ」

※ 「そのやり方、いいね」、「うまいことやったね」は、「よく考えたね」と同じような解釈になります。

意図された行為、根拠のある行動選択(なぜそうするのか、そのためにはどうすればよいか)
「考えて行動しているところがよい」
「そこまで考えてやっているんだ。素晴らしい」

親のほうから「どうしてそうするの?」などと聞いてみるのも大事です。きちんと答えられなくても、そのように尋ねること自体が、子どもの考える行為を促します。

計画
「ちゃんと計画を立ててやっているなんて、えらいなあ」
「明日遊びに行くから明日のぶんもやったんだ。素晴らしい。」

原理や理屈の理解
物事の原理や理屈(なぜそうなるのか)を知ろうとする行為は、「戦略・方略」を立てるうえで必要不可欠な思考活動の一つです。
子どものほうから、「どうしてそうなるの?」などと聞いてきたとき、「いい質問をするね」、「そうやって疑問に思うことが大事なんだよ」などの言葉を返してあげましょう。

「よくチャレンジした」――「挑戦」に向けられた称賛

子どもの「挑戦」とは、あえて難しい課題に挑んだり、未知のことに挑んだりすることをいいます。

たとえば、ジャングルジムで今までよりも一段高いところに登る、はじめて一人でバスに乗って目的地に行く、自分から初対面の子どもに声をかける、といった行動は、幼い時期の典型的な挑戦と言えるでしょう。

選択肢が二つあるとき、あえて難しいほうを選択するのも挑戦の一類です。

そのような挑戦に対しては、「よくチャレンジしたね」、「頑張ったね」、「挑戦したかいがあったね」、「できたことよりも(/できなかったけど)、チャレンジしたことがすごい」 などと言って称えます。

パーソンス・プレイズの褒め言葉

パーソン・プレイズは、主に「パフォーマンス」にスポットを当てる称賛です。
「上手だね(うまいなあ)」、「~の才能がある」、「賢いね(頭がいいね)」などがこれに当たります。
良いパフォーマンスを「さすが」と言って称えるのも、パーソン・プレイズです

類似表現の「上手にできたね」はパーソン・プレイズですが、「上手にできるようになったね」は、習熟を評価しているので、プロセス・プレイズになります。

「うまいことやったね」は、「うまい方法を考えてやったね」という解釈になるので、これもプロセス・プレイズ寄りの表現になります。

パーソン・プレイズの中には、「ふるまい」にスポットを当てるものもあります。
「お利口さんだね/お利口さんにしてたね」、「いい子だね/いい子にしてたね」、「しっかりしているね」などです。

これらの称賛のネガティブな効果としては、子どもが「良い子」でいようとするために、その枠の中でしかふるまえなくなることや、都合の悪いことを隠したりごまかしたりするようになることが考えられます。

「ふるまい」を褒める場合も、「静かにしてくれて助かった」、「よく我慢したね」のように、行動にスポットを当てるのが原則です。

まとめ

●プロセス・プレイズは、子どもの学習意欲、挑戦意欲を高め、粘り強さを強化する。また、増大フレームワークの発達を促進させる。

●パーソン・プレイズには、その逆の作用がある。

●結論:子どもへの称賛は、プロセス・プレイズを主体としなければならない。

参考文献
  1. Mueller, C. M , & Dweck, C. S. (1998). Praise for intelligence can undermine children’s motivation and performance. Journal of Personality and Social Psychology, 75:33–52.
  2. Gunderson, E. A., Gripshover, S. J., Romero, C., Dweck, C. S., Goldin‐Meadow, S., & Levine, S. C. (2013). Parent praise to 1‐ to 3‐year‐olds predicts children’s motivational frameworks 5 years later. Child Development, 84(5), 1526–1541.
  3. Gunderson, E. A., Donnellan, M. B., Robins, R. W., and Trzesniewski, K. H. (2018). The specificity of parenting effects: differential relations of parent praise and criticism to children’s theories of intelligence and learning goals. J. Exp. Child Psychol. 173, 116–135.
  4. Kamins, M. L., & Dweck, C. S. (1999). Person versus process praise and criticism: Implications for contingent self-worth and coping. Developmental Psychology, 35(3), 835–847.
  5. Nussbaum, A. D., & Dweck, C. S. (2008). Defensiveness versus remediation: Self-theories and modes of self-esteem maintenance. Personality and Social Psychology Bulletin, 34(5), 599-612.
  6. Zentall, S. R., & Morris, B. J. (2012). A critical eye: praise directed toward traitsincreases children’s eye fixations on errors and decreases motivation. Psychon.Bull. Rev. 19, 1073–1077.
  7. Dweck, C. S., (2007). The Perils and Promises of Praise. Educational Leadership 65:2.34–39.
  8. Morris, B. J., & Zentall, S. R. (2014). High fives motivate: the effects of gestural and ambiguous verbal praise on motivation. Front. Psychol. 5:928.
  9. Mizokawa, A. (2018). Association between children’s theory of mind and responses to insincere praise following failure. Frontiers in Psychology, 9, Article 1684.
すみりょう

子どもの学びに関する多くの学術的知見を持っています。
また、6歳児から中高校生まで勉強を教えた経験があり、学力に与える学習の効果は、年齢が低いほど大きいことを痛感しています。
これらを生かして、効果的で再現性の高い子どもの学びのあり方や方法を提案していきます。よろしくお願いします。

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